旅での歴史認識

日本は何をして、何をしなかったのか?

きちんとした歴史認識を持って、旅に出よう!

10年ほど前、マレーシアのクアラルンプールで、働いていました。
休暇を利用して、マレ―シアのボルネオ半島にある首狩り族で有名な先住民族「イバン族」の家を見学させてもらいました。
今でも昔の暮らしを大切にしている彼らの生活は、とても素朴で自然そのものでした。
酋長の家にお邪魔させていただいた際に、ふと見学記帳が目に留まり読ませてもらいました。
色々な国の人が記帳を残していましたが、日本語で「わが日本軍は、ボルネオ解放の為に命を賭して戦いました!」「わが日本軍はボルネオの為に尽力しました。」という書き込みがいくつかありました。
それを見て、ザラっとした心に織がたまるような気持になりました。


旅行から帰って2週間ほど経った会社の帰りの電車の中で、読みかけの日本語の小説を立って読んでいました。
突然目の前に人が立ち、「お前は日本人か?」と高齢のマレーシア人に責めるような英語で聞かれました。
私は驚き、何も言わずにその人の顔を見ました。
その老人は興奮の為どもり、半ば叫びながら「目の前で、日本兵に父親を刀で殺された
!」
「私は何度も何度も、殺さないでくれと頼んだのに、聞き入れてはくれなかった!」

「おまにその時の気持ちがわかるか?」と訴えてきました。

私は何が起こったのか一瞬理解できませんでした。
電車の中は一瞬で静まり返りました。
恐怖のあまり、周りの人たちに目で助けを求めました。
マレーシア人の中年のお母さんが、「この子には関係ないよ!」といってくれました。
しかし、その老人は嗚咽を漏らしながら、今まさにお父さんが殺されれいるかのように、私に訴えてきました。
その老人に、私は全く何も言えませんでした。
マレーシアで日本兵が何をして、何をしなかったのか、私自身がよく知らなかったからです。
私は次の駅で逃げるようにして降りました。
次の日から、しばらく会社へは車で通いました。

マレーシアはとても親日家の人が多い国で、マレーシア人はとても穏やかな民族です。
私がたまたま、そういう人に出会ってしまっただけかもしれません。
マレーシアに旅行して怖い思いをしたという旅行者を、あまり聞いたこともありません。

日本軍がマレーシアを占領していたのは、事実です。
私は未だに、日本軍が何をして何をしなかったのか、よく知りません。

もう一度きちんと自分なりに日本の戦争の歴史に向き合ってみようと思います。